Forbes誌で2018年の2月に発表された「今年利用するべき12のマーケティングのトレンド」のひとつに「Pinterest」があるのをご存知でしょうか。日本ではまだあまり広がっていないPinterestのマーケティング活用ですが、国外では多くの企業がPinterestのビジネスアカウントを持っており、これを利用してマーケティングを行っています。

そこで本日は、今後日本に広まる可能性のあるPinterestのマーケティング活用についてご紹介します。次世代のマーケティングの潮流をキャッチしましょう!

1. Pinterestとは

Pinterestとは、ネット上のサイトやPinterestアプリ上にある画像をブックマークして、自分の手元に集めることが出来る画像収集ツールです。これはスクラップブックのイメージと近いかもしれません。

自分の気に入った画像、保存しておきたい画像は、好きなカテゴリの”ボード”に分類出来ます。また自分のボードを他の人と共有することが出来ます。さらに、「画像をブックマークして集める(Pin)」、「他の人がPinした画像を自分のボードに追加する(Repin)」、「画像に”いいね”する(Like)」などの動作ができます。

2. Pinterestがマーケティングに向いているわけ

Pinterestはマーケティング向きのツールだといわれており、実際に海外では多くの企業がPinterestをマーケティングに活用しています。
なぜPinterestはマーケティング向きだといわれるのでしょうか。

Pinterestには以下のような驚くべきデータがあります。
・ユーザーの61%が、「広告用のPin(企業が自社プロダクトの売り上げを上げる目的で投稿した画像)」を通じて新しいブランドや商品を見つけている
・ユーザーの93%が、購入商品を選ぶ目的でPinterestを使っている
・ユーザーの50%が、「広告用のPin」を見て購入意思決定をしている
・Pinterestのユーザーは、そうでない人と比べて消費に使う金額が29%高い

このようにPinterestの利用は現実の商品購入と結びつきやすい傾向にあります。しかし、なぜPinterestは実際の購買行動を引き起こしやすいのでしょうか。そこには4つの特徴があります。

特徴① ユーザーの約80%が女性である

「消費は女性が左右する」とはよく言いますが、購買意思決定権を持つことが多い女性がユーザーの大半を占めています。またPinなどのアクティビティベースでみると、その実に94%が女性によるものです。年代別にみると、20~30代の女性が特に多くなっています。Pinterestのアクティブユーザー数はFacebookやTwitter、Instagramなどと比べると少ないですが、比較的マーケティングターゲットとして望ましい消費者が利用しているツールであると言えます。

特徴② 未来の行動のための情報収集ツールである

Pinterestというと、FacebookやTwitter、Instagramなどと同列のSNSとして語られることが多いですが、他のツールと一線を画するポイントがあります。それは「未来の行動のためのツール」であるという点です。FacebookやInstagramが過去の出来事を共有するツールであり、Twitterは今起きていることを共有するツールであるのに対して、Pinterestはこれから何か行動を起こすために、情報収集として画像をピックアップするツールです。そのため「今後買う商品を選ぶ」という行動と相性がいいのです。

特徴③ UIが比較行動に適している

Pinterestの”ボード”のUIを見てください。類似した商品画像を近くに並べておくことができ、非常に画像同士の比較がしやすいことがわかります。しかも自分が気に入った画像だけピックアップして、横並びに比較することができます。現在はデジタルテクノロジーが普及して、商品を検討するときにパソコンやスマートフォンなどで商品比較をするのが一般的です。そのためPinterestのUIは、商品を比べて購入検討をする時にとても便利です。

ここでポイントなのが、「広告用のPinでも広告感が出にくい」ということです。仮に商用アカウントのPinだったとしても、基本的に利用者が目にするのは画像だけで、売り文句や商品説明などは見る必要がありません。消費者側としてはいかにも広告らしい広告に対して抵抗感がありますが、Pinterestではそのような「いかにも」感を出さず消費者にリーチして、商品を購買検討に乗せることができます。

特徴④ 1つのコンテンツが他のSNSよりもよく拡散する

平均リツイート率がたったの1.4%であるツイートと比べ、PinterestのPinの拡散率はその約100倍です。またFacebook投稿と比較して、Pinterestの投稿の半減期はなんと16,000倍も長くなっています。ほかのSNSよりも投稿が広く、長く拡散する傾向があることがわかります。そのため一度画像をアップしたら、それを効果的に広めることができます。

これ以外にもPinterestには、以下のようなマーケティングにとって好都合な特徴があります。
・商品と紐づけた外部サイトにリンクできる
・購買意思決定に重要な視覚の面での訴求度が高い
・アナリティクスなど、マーケティングに使える機能が準備されている

3. Pinterestを使ったユニークなマーケティング事例

実は日本国内でも、Pinterestを利用している企業は多く存在します。ローソンやHIS Japan、UNIQLOなどがその一例です。そういった企業の大半は、商品やサービスに関連した写真を企業アカウントで掲載し、オンラインカタログのように利用する、という方法を取っています。しかし海外事例を見てみると、Pinterestを上手に利用している企業はそれとは一線を画するプロモーション手法で大きな成功を収めています。

ここでは、実際にユニークかつ大きなインパクトを与えた海外のPinterest活用事例を3つ紹介します。

  • ①Honda(自動車販売)

1つ目は日本企業のHondaです。新商品CR-Vを海外向けに売り出すときに、HondaはPinterestを使った興味深いプロモーションを行いました。このプロモーションの目的は、CR-Vのコンセプト「get out and live life(外に出て人生を楽しもうよ!)」を広く周知することにありました。

方法としてはまず、Pinterestで影響力のある5人のユーザー(以下、インフルエンサーと呼びます)に対して、24時間Pinをやめるように依頼をしました。その代わり、”Pintermission”と題して、これまでPinしていたことを現実世界で実行し、その結果をPinterestの”Pintermission”キャンペーン専用ボードに投稿してほしい、と伝えました。

インフルエンサーの手元には上記内容が書かれた依頼状が届いたのですが、この依頼状がキャンペーン成功のポイントの一つでした。Hondaは各インフルエンサーのPinをもとに、その人が好きそうな依頼状のクリエイティブを一人ひとりに対して準備したのです。インフルエンサー達は自分好みの、こだわり抜かれたクリエイティブの依頼状を受け取りました。彼らはHondaの思惑どおり、依頼状の画像をPinterestにアップして、依頼を承諾しました。実際に、現実世界でアクションを起こし、その写真をPinterestに投稿したのです。

結果としてこのプロモーションは、多くのユーザーのビュー・Repin・Likeを獲得しました。成功の要因としては、依頼状のクリエイティブにこだわってそれ自体をPinしてもらったこと、Pinterestを利用したキャンペーンにも関わらず、あえてPinterestを断つという企画自体のユニークさなどが考えられます。

(画像:カスタマイズされたデザインの、”Pintermission”の依頼状。すべてPinterestから取得)

TOK&STOCK(ブラジル最大手の家具店)

家具を選ぶときに、皆さんならどうするでしょうか。家具と言えば高価で耐久消費財ですから、ほとんどの人は、購入の前に少なくとも1回は必ず店舗で実物を見てから選ぶことでしょう。

ブラジルの大手家具店TOK&STOCKは、Pinterestを使うことで、このような実店舗での商品比較・検討行動をECと結びつけることに成功しました。なんと店舗に置いてある商品のサンプル一つひとつに、”Pinする”ボタンを取り付けたのです。顧客は店舗で気に入って、購入を検討したい商品の”Pin”ボタンを押します。するとその人のPinterestに、気に入った商品の画像がPinされるという仕組みです。これによって顧客は、店舗から出た後も手元のPinterestで気に入った商品をいつでも確認できます。後から忘れずに比較検討を行い、いざとなったらECにリンクして購入することが出来るのです。

Pinterestの担当マネージャーも、オフラインの購買行動とECでの購買行動の相互作用を生むこの取り組みに対して、とても革新的だとコメントしています。

(画像は公式動画より取得 https://youtu.be/bhmn2Zp6ttA

Kotex(女性向け生理用品ブランド)

Kotexというブランド名を聞いたことがあるでしょうか。日本での認知度は高くありませんが、実は世界80カ国以上で女性の生理用品を専門に扱っているブランドです。ティッシュの最有力ブランド「クリネックス」を製造するキンバリー・クラーク社のブランドラインの一つにあたります。

Kotexは「私たちはあなた達と常に一緒にいます」「あなた方を理解していてそばにいます」というブランドメッセージを発信するために、Pinterestを利用したキャンペーンを行いました。まずPinterestで影響力のある女性ユーザー50名(以下インフルエンサーとします)を選び、彼女達のボードをもとにその人の嗜好を推測しました。そして各インフルエンサーの好みに合いそうな手作りのギフトを、ひとつひとつ準備しました。それから、彼女たちのPinterestに『URLの先にある写真(プレゼントボックスの写真)をRepinしてくれたら、私たちならではの手法であなたへの想いを表現してみせましょう!』とメッセージを残しました。後日、呼びかけに反応してくれたインフルエンサー達ひとりひとりに、Kotexはギフトを郵送しました。突然、自分の好みにピッタリあった手作りギフトが送られてきた彼女たちがどう行動したかはご想像がつくでしょう。彼女たちは送られてきたギフトの写真をPinしたのはもちろん、その体験を他のSNSにも投稿しました。

結果としてこのプロモーションは全体で2,284件の投稿・コメント、694,853PVを獲得しました。

4. Pinterestを使ったユニークなマーケティングのポイント

上記のような興味深いPinterestマーケティングの事例を踏まえて、”効果的なPinterestプロモーションをするためのポイント”としてどのようなことが考えられるでしょうか。

いずれの事例にも共通して言えることとして、以下の2点があります。
①ひとりひとりにカスタマイズする、というポイントをうまく利用していること
②現実世界と関わりがあるキャンペーンの仕組みにしていること

まず1点目として、個々人の嗜好にフォーカスしていることが挙げられます。Pinterestは自分の嗜好に合わせてボードを設計できるツールであり、逆に言えば人の嗜好を視覚的に理解できるツールでもあります。どのプロモーションもこの点をうまく利用して、ユーザーの嗜好がボードに反映される、あるいはボードからユーザーの嗜好を反映するという仕組みを取り入れています。これによって、対象ユーザーの心に響くコンテンツを作り、強いインパクトを生んでいます。

例えばTOK&STOCKの例を考えてみましょう。あなたがどんな家具を買いたいか比較する専用のボードを作るとします。普通は画像で気になったものをPinしますが、実際の店舗で見て、触って、体験して「いいな」と思った商品をまとめておけるのです。そういう「私個人の体験」に紐づいた画像を集めたボードは、単にネット上で気に入った画像を集めたボードとは違い、「私自身の体験をスクラップして、一か所に纏めたアルバム」と言えます。前者が後者よりも強いインパクトを残すことは皆さんも容易に想像がつくでしょう。これはひとりひとりの体験にカスタマイズされたボードだからです。

またHondaやKotexの例では、ボードをもとに一人ひとりの心に刺さるコンテンツを作ったことが成功につながりました。お気に入りの画像を集めたボードは、その人の嗜好をそのまま視覚的に体現します。あなたが他の人のボードを見たときにその人の嗜好を読み取れるのと同様に、企業からすると、ボードを見ることでひとりひとりのニーズやインサイト、サイコグラフィック特性などを推測することが可能です。そこから個々のユーザーごとに、その人に特化したアプローチやコンテンツを選択できます。広く一般に向けるアプローチよりも、こちらのほうがインパクトがあるのは言うまでもありません。このように”自分カスタマイズ”された利用体験は、ユーザーの心に強い印象を残します。

2点目のポイントとして、どの事例でもPinterestから実世界、または実世界からPinterestというように、現実世界にユーザーの行動や体験が及ぶようにプロモーションを設計してあります。このように、オフラインの世界をプロモーションに巻き込むようにすることでどのような利点があるのでしょうか。単純にオンラインツールにも関わらずオフラインに影響を及ぼすという面白さももちろんあります。加えてやはりオフラインでの経験のほうが、オンラインで経験したことより印象に残りやすいことも理由として挙げられるでしょう。さらに、複数のチャンネルからアプローチをかけることで、よりユーザーの印象に残りやすくもなるでしょう。

また、このような現実世界との関わりを持たせることに関して言えば、インフルエンサーを有効に使うことも重要だと言えるでしょう。限られたリソースで成果を出すためには、インフルエンサーにどのように動いてもらいたいか、それを実現するためにはどうしたらいいかをしっかり考える必要があります。

皆さんもこれらのポイントを押さえ、Pinterestを使った独自のプロモーションを企画してみてはどうでしょうか。

【参考】データをマーケティングに利用するなら
マーケティングオートメーション(MA)とは何か

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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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