前編では野中さんのこれまでのご経歴や、パルコのマーケティングの歴史、マーケティングにおいて重要視していることを伺いました。後編では”データ”を軸にした、これからパルコが見据えるマーケティングの未来についてお話をお伺いしました。

野中さんが今注力されている領域について教えてください。

一番はデータの蓄積・分析・活用です。以前から、PARCOカードというクレジットカードのデータや、アプリのユーザーデータは蓄積・活用しています。もちろんこれは個人情報は含みません。最近では、Wi-Fiからの位置情報の統計的なデータなども、ユーザーの認証をいただいて活用できるようになっています。あとは、気温や降水量などの天候データも取得しています。天気予報のデータではなく、センサーを自作して池袋店の屋上に設置して取得しています。あとはWeb上の情報ですね。HPやECサイトのアクセスログは取得しています。

このような、「お客さまのデータをいかに分析・活用していくのか」という部分が、私の部署では一番大きなテーマです。CRMを使って企画告知、クーポンなど、パーソナルかつ最適なコンテンツを最適なタイミングでお客様に訴求することだったり、テナントさんに対して情報を提供することで、テナントさんの売上や接客に活用してもらったり、蓄積したデータを上手く活用する仕組みを作ることに注力しています。

テナントさんから購買データはもらっているんですか?

基本的にテナントさんの購買データはもらっていません。テナントさんのPOSデータはテナントさん内で完結しているので、我々は把握していません。購買データについては、PARCOカードの利用データか、アプリ「POCKET PARCO」に登録しているPARCOカードを含めたクレジットカードの利用データを基準としています。

売上の何%くらいがPARCOカードからの売上なのでしょうか?

売上高で言うと約20%、レジ客数でいうと10%くらいです。まだまだ押さえられる余地はあると思っています。ここをもっと広げていければ店舗での購買データも活用して分析の精度も上げる事ができますし、お客様と直接コミュニケーションができるようになりますから。

現状パルコの個客コミュニケーションの軸はアプリ「POCKET PARCO」です。POCKET PARCO経由であれば、肌身離さず持っているスマートフォンの中に存在しますので、プッシュ通知やチェックイン機能などを活用して、売上等と連動したリアルタイムでのCRM的なコミュニケーションも可能なので、登録数の増加とその活用には注力しています。

パルコが取得したデータをテナントさんに供給する取り組みはすでに実施しているのでしょうか?

PARCOカードの統計的な情報に関しては、すでにテナントさんに開示しています。もちろんパルコの施設全体とテナントさん自店の情報に限定していて、他のテナントさんの情報に関してはもちろん開示できませんが。主に地域での特性や、年齢が中心ですね。あとはPARCOカードのグレード毎の会員比率の開示はしています。パルコの店舗スタッフの仕事の中には、そのようなデータを使ったコンサルティングをして、テナントさんの売上を上げることも含まれています。

良質なデータを取れば取るほどコンサルの質もどんどん上がっていくので、テナントからみた商業施設としての優位性もどんどん高まっていくということですね。

そうですね。他社も色々なことに取り組んでいる中で、パルコも商業施設としても差別化や特徴づけをしていく必要があるので、テクノロジーをもとにデータを活用して、いかに売れる施設にするかを優位性にしていきたいと思っています。

先程の演劇や出版に関するデータもシナジーを持たせていくのでしょうか?

そうですね。連動は十分考えられます。そういう意味でもグループICT戦略室がそのような役割を担っていければと思っています。

先日発表された宅配ボックスについて詳しく教えてください。どういった狙いがあるのでしょうか。

昨今、再配達問題が取り沙汰されていますが、我々もカエルパルコで買って頂いたお客様においては、その問題を解消したい思いがあります。また、サービス拡張という点でも、例えばパルコの店舗があるエリアの配達網を作って、特定エリア内であれば即日配達可能であるとか、オフィスや学校、病院等で受取可能といったサービスも考えています。このようなサービス拡張を考えた時に、宅配ロッカーはかなり有効です。パルコとしてはサービス面の拡張を主な目的として取り組んでいます。

市場としても、今後宅配ボックスは増えていきそうですね。

すでに他社の宅配ボックスが駅やコンビニにありますが、まだ色々な可能性があると思います。例えばパルコの外壁に設置して、仕事で遅くなった方にはカエルパルコで注文した商品を帰りにピックアップしていただく、といったことも考えられます。特に女性の場合、夜中に家まで宅配に来てほしくない、といった話も多いので、そういう方々にとって宅配ロッカーは有効ではないでしょうか。

他にも、販促利用の可能性も模索しています。例えばQRコードを配布して、一つだけ宅配ロッカーを開けられるQRがあって、そのロッカーの中には景品が入っている、みたいなことも考えられると思います。

とは言え、主たる目的は、弊社が目指している「24時間パルコ」の強化です。パルコの客層は20代後半女性がコアになるので、働いていて一人暮らしというシチュエーションも多いことを考えると、家に居ないことが多いと思います。かつ夜中の宅配だと、値上がり問題や、夜間宅配の廃止なども増えているので、宅配ロッカーが一役買うと思っています。

宅配ロッカーに関してもデータを取得・活用することで、さらなる発展性が見込めそうですね。
オムニチャネルやデータ・デジタル化を推進していく中で、体制面におけるポイントを教えてください。

先ほどもお話しましたが、パルコはリアル(店舗)基点を大事にしています。なので、リアルとデジタルが双方の状況をそれぞれ認識する必要があると思っています。EC化が進むことで、リアル店舗が疎かになるという例が増えてきていますが、やはりリアルとデジタルそれぞれの長所・短所を補完しあわないと、最終的には上手くいかないと思います。

今の世の中、何か欲しいと思ったらみなさんすぐに検索しますよね。大抵上から順にECサイトが出てきて、このサイトには在庫がどれだけあるかが簡単にわかります。この利便性をリアル店舗にも活かしたいと思っていて、現在カエルパルコでの在庫情報の連動を進めています。何か欲しいと思って検索した時に、どこの店舗に何が売っているのかがわかれば、パルコに行ってみようと思ってもらえると思うんです。テクノロジーも進化していますが、やはりECの場合試着ができないなど、店舗ならではの強みもありますので、店舗とECの顧客体験を近づけていきたいと思っています。

他社さんの場合でも、ECと店舗両方を利用しているお客さんの方が単価は高いと言われています。それはパルコでも当てはまると思っていて、ECと店舗双方を活用してもらうことで利便性が上がり、最終的に売上もあがります。元々弊社の「カエルパルコ」はリアル店舗の在庫を活用し、リアル店舗に売上が上がるサービスですが、プラットフォームを入替え、リアル店舗での個客優待サービスと足並みを揃えたり、アプリとの連動を図るなどして、そのあたりは強化しています。

ありがとうございます。最後に、未来のCMOに必要なものを一言でお願いします!

「事業全体を把握する視点」ではないでしょうか。マーケティング=売れる仕組みを作ることなので、そう考えると会社の70%くらいはマーケティングと言えます。また、資源配分を効率よく行うのがCMOの役割ということを考えると、会社の70%を把握する力は絶対必要だと思います。その点、それなりの権限のあるレベルの人が適していると言えますね。

70%を把握するには、地道に理解していくしかないのでしょうか。それとも、野中さんのように色んなキャリアを経験をする必要があるのでしょうか。

私のように色々なキャリアを経験するという手もあると思いますが、一番大事なのは行動力ではないでしょうか。先日EC関連のカンファレンスでパネリストの方がおっしゃっていましたが、皆さん、会員さんやお客さんの家まで行って、どんな生活をしているかリサーチするらしいんです。しかも、皆さん自分自身でリサーチするらしいんですよね。今の時代、データからわかることも多いですが、実際にあって話をすることで、より深くお客さんのことを理解することができます。自分自身で行動すれば、現場メンバーもついてきますしね。ひとえにマーケティングといっても色々な段階があるので、一つ一つを把握するために、実際に自分でやってみるということが大事なのではないでしょうか。

  • TEXT BYYuuki Miyagawa
  • BANNER DESIGN BYAimi Hayatsu

Speaker Profile

  • 野中 健次

    パルコ

    グループICT戦略室 業務部長

    パルコ入社後、本部や全国の店舗でテナントリーシング、宣伝販促、経理業務等に携わった後、2013年にグループである百貨店に出向し、顧客、販促業務に加え、オムニチャネル構築等に従事。2015年度パルコに戻り、WEB/マーケティング部に着任。店舗のICT活用や、ハウスカードとスマホアプリを連携した個客マーケティング推進を担当。2017年度より、マーケティング関連のシステム開発担当が、情報システム部門と統合し現職。

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