話題のエクササイズ用品や生活雑貨の正規販売元として通販やプロモーションを幅広く展開している通販ブランド、「ショップジャパン」。このショップジャパンを運営する株式会社オークローンマーケティング(以下、オークローンマーケティング)でCMO(執行役員)を務める加藤氏は、P&Gに入社後、当時柔軟剤の新商品であった「レノア」のブランドマネージャーを務め、柔軟剤No.1ブランド入りを果たす。その後、ダイソンやDELLをはじめとした、外資系ブランドのマーケティングやブランディングディレクターを歴任。幅広い業界でマーケティングやブランディングに従事し、ビジネスの成長を促進させてきた加藤氏に、マーケティングにおけるデータ思考の重要性や、ショップジャパンの強みの裏側についてお話を伺った。

まずは簡単に加藤さんのご経歴を教えてください。

1995年に新卒でP&Gに入社してからは、10年ほどヘアケアや柔軟剤のカテゴリーなどの新商品のブランドマネージャーを担当していました。柔軟剤の「レノア」を担当していた際には、社内外で最も成功したブランドとして数々の賞を受賞し、柔軟剤NO.1ブランドに導くことができました。

ここで得たマーケティングやビジネスの基本的な考え方は、その後の外資系ブランドのブランディングや今のショップジャパンのマーケティング戦略にも役立っています。

その後はレキットベンキーザージャパン、日本コカ・コーラ、DELLジャパンにてマーケティングやブランディングのディレクターを務め、2014年にはダイソンジャパンのマーケティングディレクターに就任しました。「Dyson Supersonic」という新製品をを世界に先駆けて日本で販売したり、日本のマーケットニーズである髪質の違いに注目して、日本向けの商品の開発にも従事しました。その結果、年平均6%程度の成長にとどまっていた空調家電カテゴリーを48%も伸ばす経験もさせていただきました。

2017年5月に現職のオークローンマーケティングにジョインし、ショップジャパンの事業統括から人事計画まで幅広く従事しています。

柔軟剤のレノアをはじめ、長年外資系ブランドのブランディングに携わられていますが、ブランディングをする上で特に意識されてきたことはありますか?

プロダクトの“強み”や“価値”を理解し、その価値を求めるターゲットに対して、プロダクトの価値を最大限伝えることはいつも意識しています。ブランディングとは、「そのブランドへの共感や信頼を通じて、顧客にとってのブランド価値を高めていくこと」です。そのため、「真実を語ること」が非常に重要です。脚色して間違った情報や誇張した偽りの情報を伝えてしまうと、信頼を失ってしまい、ブランドに共感してもらえません。

また、プロダクトの持つ価値を求めていない人に対して、いくらその商品の価値を伝えても、共感してはもらえません。例えば、ポルシェの例を挙げると、ポルシェが狙うべきターゲット層は「速くてかっこいい車が欲しいラグジュアリー層」であって、ファミリー層ではありません。

それにも関わらず、家族で楽しくドライブするCMや家族参加型のイベントといった、ファミリー層向けのブランディングをしても、当たり前ですがポルシェの本来持つ“速さ”や“かっこよさ”という価値は伝わりません。ブランディングをする際は、「この商品にはどんな価値があるのか」、「この商品を欲しいと思うターゲットは誰なのか」を意識して、正しいターゲットに対して、正しい情報を、最大限に伝えていくようにしています。

ただ、ここで忘れてはいけないのは、ブランディングはあくまで手法の一つに過ぎないということです。当たり前ですが、商品が良いから売れるんです。売れる商品だからこそ広告やブランディングをすることに意味があるんですね。売れない商品に予算を投下しても限界があるので、その予算があるならまずは売れる商品にすることが一番重要ではないでしょうか。

プロダクトの価値を伝える上では、ポルシェの例のように、まず“顧客が何を求めているか”を理解することが重要だと思いますが、そのために意識されていることはあるのでしょうか?

定性的なお客様の生の声と、定量的なお客様のデータは常に見ています。

定性的なデータに関しては、アンケートデータはもちろんのこと、当社の場合、自社でコールセンターを運営しており、そこではお客様の生の声を聞くことができるので、そこからインサイトを探ることもできます。

定量的なデータに関しては、「どの広告経由で」「どの商品が」「どれだけ売れたのか」というデータや、「どのようなキーワードを検索した人が」「最終的に購買に繋がっているのか」というデータ、一般的な顧客調査、インターネット上のアンケート調査など、多角的な視点でデータを見るようにしています。

加藤さんご自身がデータを重要視されるようになった背景やきっかけは何かあるのでしょうか?

みなさんも聞いたことがあるかもしれませんが、P&Gは非常にデータを重要視する会社です。「データを持っていれば勝つ」ともよく言われていて、自分がやりたいことを通すには“誰よりも正しいデータ”を持って来る必要があります。逆にデータがなければ誰も話を聞いてくれません。P&Gにおいて、自分のマネージャーやディレクターなどの“階層”に勝つためには“正しいデータ”を持っていて、かつそれを詳細に理解している必要があります。

また、DELLに関しては、ダイレクトの会社ということもあって、実施した施策の成否が3時間後にわかるというような状況だったので、もはや“データが全て”というような会社でした。となると、政治的にどうとか、誰が決めたとかはもはや全く関係なくて、社長が決めようが現場社員が決めようが、それが正しかったのか間違っていたのかが、3時間後に誰が見ても分かる形で証明されます。

なので、いかにスピード感を持って意思決定するか、ベストな回答を導き出すことができるかに全社員が集中するので、階層なんてもう関係ない。その意思決定も現場レベルで行われているので、非常にデータドリブンな組織でした。この経験も今に活きています。

オークローンマーケティングにおいてもそれは変わりません。これは弊社の強みでもありますが、販売する商品の選定から、CM制作を中心としたプロモーションやマーケティング戦略、コールセンターによる受注やEコマースや直営店といったチャネル運営まで、お客様が商品を認知してから購入するに至る全てのプロセスを、一貫して自社で行っています。

これにより、お客様に対してダイレクトなマーケティング施策を実施することができますし、全てのタッチポイントのデータを取得することができるので、現場レベルでスピーディーかつ高品質なPDCAを回すことが可能になっています。自分たちの努力次第で結果が全て決まるので、その精度を高めるためにもデータを活用することはとても重要です。裏を返せば、外部要因のせいだと言い訳が出来ないですが(笑)。

とはいえ日本的企業の場合、組織体制的にも、現場社員のマインドとしても、現場が意思決定をするのはなかなか難しいようにも思いますが…。

それはそのとおりですね。なので、ビジネスの成り立ちがダイレクトマーケティング的かどうかによる部分も大きいです。その点ではオークローンマーケティングもダイレクトなのでDELLと非常に似ています。ダイレクトの血が流れていると、やっぱりみんな「何かアクションしなきゃ!」という強迫観念に駆られているように感じます。

ただ、ダイレクトか否かという分け方もこれからの時代はナンセンスだと思っています。以前のように、マス向けのTVCMを打って終わり、という世界ではなく、全てのビジネスにおいて、今何が起きていて、何を変える必要があるのか、という細かな最適化をし続けなければ競争に勝つことは出来ない時代です。そのためには、現場に正しいデータがあって、そのデータを元に正しい意思決定をする必要があるんです。

もちろん、会社の将来を左右するような意思決定は経営層が行うべきですが、階層によって意思決定ができる粒度を分けて、その階層ごとに意思決定に必要なデータを持たせないとダイレクト的な発想で会社を動か

  • TEXT BYMei Kajiya
  • BANNER DESIGN BYAimi Hayatsu

Speaker Profile

  • 加藤 裕一郎

    オークローンマーケティング

    執行役員 ショップジャパン事業統括

    慶應義塾大学商学部卒業後、1995年にプロクターアンドギャンブルジャパン(P&G)に入社。ヘアケア、柔軟剤のカテゴリーなどにおいて、ブランドマネージャーを担当。各外資系のリーディングカンパニーでマーケティングやブランディングのディレクターを歴任、ビジネスの伸長に貢献。2017年5月に株式会社オークローンマーケティングに入社。同社のブランド「ショップジャパン」の事業統括から人事計画まで幅広く従事。

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