Part1では、2018年12月5日に実施されたb→academy summitのキーノートである、オイシックス・ラ・大地株式会社 CMT(チーフマーケティングテクノロジスト)兼 株式会社フロムスクラッチ CIO(チーフイノベーションオフィサー)である西井 敏恭 氏と、株式会社ZOZOテクノロジーズ 金山 裕樹 氏による、アパレルビジネスにおける次世代データビジネスについてのレポートをご紹介した。本記事はイベントレポート3本立ての中編として、クレディセゾンのカードマーケティングについてご紹介する。

再びb→academyのチェアマン西井氏が登壇し、株式会社クレディセゾン 取締役 デジタル事業部長 兼デジタルマーケティング部長の磯部 泰之 氏を迎え、2人のトップマーケターによるトークセッションが始まった。セッションは、磯部氏がモバイル決済の利用状況について会場に問いかけることからスタートし、そこから話題は徐々に本題へ向かい、クレジットカードとモバイル決済との紐づけについて語られた。

モバイル決済とクレジットカードの未来

磯部すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、モバイル決済には、クレジットカードと紐づけるタイプと、銀行口座とダイレクトに紐づけるタイプの2種類があります。当然、私達クレディセゾンからすれば、いかにクレジットカードと紐づけてもらえるかが非常に重要です。これからのクレジットカードの未来はどうなるかわかりませんが、クレジットカードに紐づけて使うことにも利点はあります。いわゆる後払いができる点です。やはり、与信がついた後で回収するというモデルは、様々な意味で便利さがあります。ただ事業主側からすると、事業リスクを取っているので、その分決済手数料が高くならざるを得ない、ということはありますが。

さらに磯部氏は、ユーザー目線からキャッシュレス化の目的を意識することの重要性を語る。

磯部今、日本ではキャッシュレスに関する様々な取り組みが行われていますが、そもそもなぜキャッシュレスをするのか、何が便利になるのか、何をどう解決するのかという視点が、意外と疎かになってしまっています。ユーザーから見ると、どのように感じるのか、という視点をもって推進する必要があると考えています。

しかし、クレジットカードを利用するユーザーにとって、手数料の存在は無視できるものではない。そんな現状を踏まえ、「銀行口座とモバイル決済が直接紐づけられたキャッシュレス社会に進んでいった場合、手数料ビジネスであるクレジットカードの存在はどのように変化していくのか?」と西井氏が問いかける。

磯部中国では、アリペイとWeChatPayの登場で、一昔前まで話題になっていた銀聯がほぼ話題にあがらなくなっています。普通に考えれば、日本でも同じようになる可能性はもちろんありますが、必ずしもそうとは限らないとも思っています。実際に他の国々をみると状況は様々で、国民性や年代によってクレジットカードに対する意識が全く違います。正直、私もまだわからないというのが本音です。

顧客データの取得とその活用

データというテーマを話の中心に据えたいという西井氏の発言から、トークは一気に核心へ迫る。まずは磯部氏が日本のクレジットカード市場の現状について語った。

磯部日本のカード市場は、どこか一つの会社のカードが独占的にシェアを占めているのではなく、4、5社に分散しています。弊社も含め、みなさん大体約5兆円の取扱高があります。

ここで西井氏が、近年の日本におけるクレジットカード取扱高の伸び率について質問を投げかける。磯部氏は「国によってフェーズが異なり一概には言えないが、伸び率は低いほう」と回答し、増えるトランザクションデータを活用した小売業との新しい連携の必要性を語る。

磯部クレジットカードの取扱高が伸びているので、取得できるトランザクションデータも増加しています。また、弊社の場合、昔から小売業との連携が多いのですが、これからは小売業の在り方も変化していきます。その変化も踏まえて、我々が保有するデータを活かすことで何が実現できるかを考えていく必要があると思っています。

さらに西井氏による、「データ活用を数年前から始めているクレディセゾンとしては、データの強みはどこに活きているのか?」という質問に対し、磯部氏は「既存のオペレーションを変化させられること、顧客との関係性を変えられること」の2点を語った。

磯部データを使うことで、既存のオペレーションをどう最適化できるかは常に考えています。具体的には、クレジットカードの申請手続きをどう簡略化するかという点です。例えば、先週、KYC(Know Your Customer:本人認証手続)の方法が大幅に簡略化しました。本人確認に関する規制の管轄は警視庁になりますが、カード会社に関わらず、金融機関に対しては規制が非常に厳しいです。従来は、申し込み時に運転免許証など本人の顔写真が映っている文面のコピーを提出し、カード送付時には本人限定郵便で郵送する必要がありましたが、今ではスマホで写真や動画をとって送信するだけで確認が取れるようになっています。

さらに西井氏が、「クレジットカードはデータの活用範囲が広いと思うが、その他のCRM施策や顧客との関わり方はどのようなものがあるか?」と質問。磯部氏は不正利用の防止施策を例に挙げ、「リスクとのバランスを取りつつ、パーソナライゼーションを可能にしたい」と、今後の展望について語った。

磯部不正利用を防ぐために今年からAIを導入しています。会社によっては人が対応するべきという方針の会社もありますが、弊社はAIが不正利用と判断するシナリオの数を100倍・1,000倍にすることで不正利用の防止に取り組んでいます。さらには、限度額に達したとしても、過去のデータを参照することで、追加の利用を許容する、というようなことも考えています。リスク部門とマーケ部門がバランスをとってパーソナライゼーションを実現すること、それが今後の方針です。

FinTech領域における新規事業の可能性

磯部氏はさらに、FinTech領域における新規事業の可能性にも言及した。クレディセゾンの現在地の説明をしつつ、「アセットを活かした新規性の追求に未来がある」と語る。

磯部新しいビジネスとしては、2016年にプライベートDMP(データマネジメントプラットフォーム)を構築して、自社で取得したデータを様々なDSP(デマンドサイドプラットフォーム)に提供するだけでなく、オムニバスというインターネット広告の会社を買収して自社でやってしまう、ということも行っています。ただ、それだけでは新規性がありません。先程の話とも関連しますが、我々が持っているデータと、加盟店(小売業)の今後の在り方とをどう掛け合わせていくかが大切だと考えています。それは広告かもしれないし、広告とは思わせないようなプロモーションやレコメンデーションかもしれません。いずれにせよ、そのような新しい買い物体験を作り上げることに、我々の未来があるのではないかと考えています。

さらに磯部氏は、決済手数料をほとんど取らないビジネスモデルが成り立ち始めている現状に対しても、「決済システムはただの入り口。取得したデータを軸に他業界に進出していくことが本来の目的」と持論を展開する。

磯部決済手数料がゼロ、あるいはほぼゼロのビジネスモデルは、決済でビジネスをしようと思っているわけではありません。そこから得られたトランザクションデータやトラフィックを他の事業に活かしていくというもので、うちとはビジネスモデルが異なります。

ここで西井氏より、「クレジットカードという、希少性の高いビジネスモデルを展開しており、大量のデータを保持しているクレディセゾンが、今後見据えているビジネスは何か」という質問が投げかけられた。これに対し磯部氏は「顧客との関係作りの改善と、新しいビジネスのために今のビジネスをうまくやることが重要」と回答した。

磯部上から目線な表現になってしまいますが、当社のカードをお持ちいただいているお客様を正しく評価するシステムを作ることを検討しています。長くセゾンカードを使って下さっているお客様や、信頼性の高いお客様を第一とすることを目的としています。お客様を正しく評価する適切な物差しとして、AIや何かしらの基準を使っていきたいと考えています。そうしてお客様との関係をより良くしていきたいですね。

また、弊社は事業会社なので、新しい事業を作りたいという思いは依然として強いです。新しい事業をやる為にはやはりデータが重要になってくるので、クレジットカード事業を含め、現在走っている事業をうまくやることが必須条件だと考えています。

データ活用のカギは“クレンジングとコミュニケーション設計”

最後に磯部氏より、“データ活用を推進する上で大切なこと”についての話がありセッションは終了を迎えた。

磯部決済データは生のままだと、使えそうで使えない事が非常に多いです。それはAIを活用する際も同様で、前段階でのデータのクレンジングが大切になります。あとは、実際に施策として何をやるかですね。コミュニケーション設計を綿密にしなければ施策がうまく回らないと思います。

b→academy summit 2018 イベントレポート Part3に続く

  • TEXT BYTakuya Kuzumi
  • BANNER DESIGN BYShungo Kamisaka

Event Overview

開催日時 2018年 12月 5日 (水)

顧客の決済データをはじめとした多様なデータを保有しながらも、セキュリティが厳しい金融業界で、いち早く会員データのマーケティング・新規事業創出への活用を始めたクレディセゾン。クレジットカード事業において多種多様な企業やベンチャーがFinTechを駆使した新しい与信、決済、送金サービス等の金融サービスに参入してきている中、顧客に寄り添うコミュニケーションや膨大な決済データの活用による新規事業展開こそ課題解決のカギと目をつけた同社は、2016年より全社のデータを統合したデータ経営プロジェクトを始動しました。今回のセッションでは、今注目されるマーケティングのインフラであるCDP設計のポイントについて解説頂きます。本セッション初公開となるカード事業のKPI改善に貢献する具体的な施策事例を紐解きながら、これからCDPを導入する方が想定しておきたい注意点や、クレディセゾンが構想するさらなるデータ経営の未来が明かされます。

Speaker Profile

  • 磯部 泰之

    クレディセゾン

    取締役 デジタル事業部長

    デジタルマーケティング部長

    1992年株式会社クレディセゾンに新卒として入社。営業企画やDBマーケティング推進業務に従事後、銀行・百貨店・コンビニ等との合弁会社へ出向。その後経営企画や広告宣伝部門を経て、2011年より現職。データビジネス事業企画、ネットビジネスでの新規事業開発を担当。また、2015年6月VBとの事業シナジーを目的に設立した「セゾン・ベンチャーズ」にて取締役を兼任。 2017年3月 ネット事業部長(現デジタル事業部)就任。

About b→academy

b→academyは“Innovation・Data・Digital”をテーマに取り上げるマーケター育成のためのスクール。
従来のマーケティングのトピックにテクノロジーの要素を取り入れることで、データマーケティングの集合知を創ることを目指しており、当アカデミーのチェアマンは、オイシックス・ラ・大地株式会社のCMT(チーフマーケティングテクノロジスト)兼 株式会社フロムスクラッチCIO(チーフイノベーションオフィサー)西井敏恭が企画責任者を務める。今後継続的に開催されるこのイベントでは、“データ経営時代”の先頭を走るマーケターを招き、最先端のトピックを取り上げる。

https://bdash-marketing.com/seminar/b-academy/
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